「ごめん景、離れないで。泣きそうな顔を.....見られたくない」
「そ、そっか.....泣きそうなの?」
「.....」
だって
その声に
どれほど名を呼ばれたかったか
その瞳で
どれほど僕を見て欲しかったか
この手で
どれほど触れたかったか_____
そんなことを今まで毎日、ずっと考えてたなんて
君は知らないだろう
きっと君が想像するよりずっとずっと、ずっと
僕は君のことが大切で
今こうして触れているだけで手が震える
このまま離したくないと
思ってしまう
「もう離さないからね、爽馬」
景の優しい声が、耳元で囁やいた
「え.....」
「私たちの前からいなくなっちゃうこと、もう許さないから。あの時みたいに聞き分けよくお別れしたりなんて、しないんだからね」
冗談めかして言う景の背中が、笑い声で揺れる
「そんなことしたら、泣き喚いて駄々こねちゃうから」
_____本当に?
思わずそう聞き返しそうになる
「本当だよ?」
冗談だと思ってるでしょ?
タイミングよく、景がそんな風に笑った
「うん.....ありがとう」
「こちらこそ。帰ってきてくれてありがとう、爽馬」



