そう言う彼の表情は、笑っているようであまり笑っていなかった
彼はあまり本音を言うような人ではないけれど
何か力になれないだろうか
話を聞くことしかできなくても
いつも、彼は人の悩みをきく側だから
普段はかけていない黒縁メガネの奥の瞳は儚く美しく
吸い込まれるようだった
「結斗、何か悩んでる?」
景は彼が座る椅子の傍に膝をついて彼を見上げる
結斗は景にそんなことをさせてしまい、慌てて景の両手を手に取って彼女を立たせた
「ううん.....あ、いや。座る?」
結斗が引いた横の椅子に景は腰掛ける
景が不思議そうに彼を覗き込むと、結斗は苦笑いして言った
「実は最近、伊吹グループの経営がうまくいってないんだよ」
「え.....」
「ここにきてやっと、伊吹グループのボロが出始めてきたってところかな」
景はしばしば絶句してから
「そうだったんだね」
と呟いた
確かに以前、彼から伊吹グループの経営方針に対する不満を聞いたことがある
英語は読めなくても、グラフが右肩下がりなのを見て景はなんとなく察しがついた
伊吹グループの経営がうまくいかず、株価が落ちてしまった
詳しくはよく分からないが、きっとそういうことなんだろう