「バカな選択だと心配されそうだから、景には黙っていて欲しいんだ。責任から逃れようとどっかに身を潜めるために逃げたとでも思われてたほうが楽だし」
「なんだそれ、思わねーだろ。でも黙っとく」
「うん、ありがとう」
ライは美音からそっと体を離すと、2メートルほどの距離を保ってから後ろの市河と爽馬と目を合わせた
2人も納得したように頷く
「早く行けよ。2時間だけ不可視魔法はお前にかけておいてやるから、自由にどこでも好きなところに行け。恨み買った妖術結社の個人にも見つけられないような、遠いところへ行け」
美音は手の甲で涙をぬぐいながら
「ありがとう、ステキな魔法を持ってるね」
と笑う
初めて見る彼女の笑顔に、ライもつられて笑った
「電車も新幹線もタダで乗り放題。好きに使えよ」
「それは凄いや、ありがとう。私が言えた立場じゃないけど、君たちにはどうか景を守ってあげて欲しい」
「大丈夫、こいつらウザいほどですよ」
市河がニッと笑顔を見せるので、美音は「そっかそっか」と吹き出した
美音は市河をすっと見据える
「ありがとう」
「俺は何も.....」
次いで爽馬を見据える
「爽馬くんも、今までありがとう」
「.....はい。ありがとうございました」
そしてライと目を合わせ
「ありがとう」
と心からの感謝を述べた
ライは数秒黙って美音と視線を合わせる
複雑だけど、なぜか気持ちは驚くほどすっきりとしていた
「俺からも.....ありがとうございました」
こうして笠上美音は再び
一人姿を消して
新しい人生へと歩いて行った



