「え、兄貴ぃそんなことまで視えるの?」
言い当てられてぐうの音も出ない“結斗”を気にする様子もなく市河が感心する
「は、私にだってそれくらいできるし」
右手を上げて長女ハルがいらぬ対抗心を燃やしたところで、ようやく“結斗”は周囲に睨みを効かせながら口を開いた
「.....解毒薬をダシにしなくたってお前らは言うことを聞かざるを得ない。こいつの身体、返して欲しかったら爽馬を引き渡せ」
発言からはほんの少しだけ焦りが見えたが、予想以上に強気に出たものだ
言われた爽馬は、彼にしては複雑な面持ちで“結斗”を見つめている
彼も今までずっと黙ったままだったが、一体どのような気持ちで見ていたのだろう
景はそれを考えて「あ」と声を出した
「どうしたの景ちゃん?」
満宵に尋ねられ、景は「う.....」と言葉に詰まる
______そうか
無口で、淡々としていて、冷酷で.....
今、目の前にいるのは恐らく爽馬の兄弟だ
人の身体に憑依し乗取ることを『狐憑き』と言うと聞いたことがある
きっとそうだ
だから爽馬は、何も言えないのだ
兄弟がこんな事をしなくてはならないのは、妖術結社から逃げ出した彼の尻拭いなのだから______
そんな考えが、一瞬で頭の中を巡った
とすると
この人もまた
爽馬と同じなのだと気付いてしまった
爽馬を必死に救おうとした私たちには
この人を責める権利は無いのである
その事実は、非常に困るものだった



