景と結斗としても、爽馬と笠上美音の心情がはっきりと見えてはいなかった
けれど、爽馬が笠上美音をこの夏祭りに連れてきたことは事実で
笠上美音が自分たちと爽馬を引き合わせてくれたのも事実
心情は分からなくても、その行動が彼らの気持ちを物語っていた
それに
「.....再会したとき、爽馬は男子寮Bに帰りたいって言ってたんだ。笠上美音も、どうやら妖術結社から逃げ出したらしくて、敵.....つまり妖術結社は2人を捕獲しに来たみたい」
早口の結斗の説明に対し、弥隼は
「それで待機中、廃校舎の方から色々と音が聞こえてきたんやな」
と頷く
千加もちらりと弥隼と目を合わせてから
「その割にはすぐに小高爽馬も笠上美音も居場所が特定されたみたいだし、敵は多いらしいし、案外逃げ切るのは難しい気もするけど」
と、難しい表情を浮かべた
確かにその通りだ
妖術結社側がはじめ拡声器で忠告して来た際、彼らは美音のケータイを監視していたことで彼女の画策が発覚したと言っていた
つまり彼らは美音を四六時中監視していたというわけで、伊吹グループ侵入の計画の一端を担った彼女を簡単に逃す気はないだろう
さらに爽馬に至っては、小高家が妖術結社で幅を効かせている家系であるだけに美音よりも妖術結社の柵(しがらみ)は強い
「でも、今のところ爽馬は捕まってないはず。屋上から、ライと一緒にテレポートしたから。お姉ちゃんは.....分からないけど、でもきっと.....」
景は祈るような気持ちで、今の段階では誰も妖術結社に捕まってはいないことを説明した



