* * *
さて
もちろん景が電話に出れず、メッセージも返せずにいるのは
「うわぁぁああーーーー!うわぁぁあああーーー!!こーーーっっわ!待ってこーーーっっわ!!」
落ち着いていないからである
数分前
景は四階建て校舎屋上から転落
と見せかけて、およそ三階から二階にかけて減速し徐々にふわりと地上に降り立った
直後には全身から力が抜け、ぺたりと尻餅をつき身体は震えて全く動けなかった
強がっていたけれど本当はめちゃくちゃ怖かったし
余計なことを考える暇を自分に与えぬよう、我武者羅に転落まで突き進んだけに、終わって気が抜けた後には恐怖が安堵に混ざって全身を襲った
咲夜はそんな景のTシャツの中からシュルシュルと飛び出すと、元の姿に戻って彼女の前に片膝をつく
そして、同じかそれ以上の恐怖を味わったにもかかわらず
「頑張った。怖かったな.....!」
と優しく景を抱き締めてくれた
「.....ううん、ごめん.....私が自分で言い出したのに、咲夜の方がもっと大変だったのに.....」
景は小さく震えながらも、提案者の癖に腰が抜けて動けない自分を責める
そんな彼女に咲夜は優しく微笑むと、その膝裏にそっと手を入れて抱き上げた
「とりあえず、誰か来る前に人目につかないところに避難しようか」
「ありがとう.....ごめんね」
「そんな謝ることないだろーっ、今のところ成功したんだから喜ぼう」
「ん、そうだね.....!」
咲夜はやっと笑顔を見せた景に満足そうに頷くと、辺りをキョロキョロと見渡して確認
誰にも見られていないことを確かめると、駆け足で学校から抜け出した
そんなわけで
改めて人目につかない住宅街の細い路地裏に入り一息ついた景は
冷静を取り戻した事で屋上から飛び降りた時のことを鮮明に思い出し、勢いでなんて事をしたのだろうと自分自身に驚愕したのだった
「こっわかったぁぁああ!!」
「そうだな」
「屋上から飛び降りちゃったよ私たち.....」
「そうだな」
「私体重40キロは超えてるのに、よく減速できたね咲夜、天才だよ」
「本当にそうだな」
最後の言葉にだけ心底共感したように深く頷きながら、咲夜は顎をさする
「しかしまぁ、今頃アイツらは地面に景の死体が落ちてない事を確認して、血眼で景を探してんだろーな」
彼の表情には特に深刻さは滲んでいなかったが、よくよく考えるとそれは恐ろしい事だった
なぜなら住宅街で敵と対峙してしまった場合、住民にバレるような派手な攻撃で敵と戦うことができないからだ
美音はGPSで現在地やメール内容全てを妖術結社に監視されたケータイを、失踪前にゴミ箱に捨てている
つまり彼女はケータイが監視されているのを分かっていたということで
メール内容から妖術結社が彼女の企みを感知し出動する可能性があることは予想していたはずだ
そこで爽馬と合流した景たちが妖術結社に囲まれても戦えるよう、廃校となった学校を待ち合わせ場所に指定してきたのだと思われた



