さて
上の階に逃げてきたはいいものの、敵は昇降口だけでなく校舎の四方八方を囲んでいるはずで
景、結斗、市河、爽馬の4人は校舎三階廊下中央にて作戦会議を始めた
「いい?追手が来てどうしようもなくなったら、景ちゃんは大変だけどシベリアンハスキーになって、いっちーと爽馬は景ちゃんを抱えて屋上まで走るんだ」
「ああ、で、お前は?」
提案した結斗に、市河が人差し指を向ける
「霧になってる。2人がやられて手が無くなった場合に、後ろからでてくるから」
「分かった」
景は力強く頷くと、千冬、ルークと、先ほど離脱したライの顔を思い浮かべる
大丈夫だろうか
二階に到達してすぐ
一年生2人を残してしまったことが4人とも気がかりで、即戦力になるライが一人離脱して加勢に行ったのだ
楽しいはずだった夏祭り
自分たちのせいでこんな事に巻き込まれても、一緒に戦うと言ってくれた彼らだけは無傷で返さなければ許されない
優しい彼らはそんな事ないと言うだろうが
やはり、なんとしてでも守らなければならない存在だった
「さっき、僕の知らない人が2人いたんだけど.....」
ずっと無口だった爽馬の言葉に、3人は注目する
「1人、外国人.....あの人の名前は?」
すぐに彼の言いたいことがわかった3人は、顔を見合わせて口元を緩める
緊迫していた空気が少し緩んだところで、景はまっすぐ爽馬を見つめた
「うん。あの子が、一年生の藤樫ルーク君だよ」
それを聞いた爽馬の表情は変わらないが、しばらくして長い睫毛がゆっくりと下がって頬に影を作る
「彼がルーク・ウォリナー.....藤樫ルーク.....うん.....。彼は本当に今の今まで、景のことと、僕のお願いを守ってくれてた.....」
「うん、入学してからずっと見守っててくれたよ。
ありがとね、爽馬。ルーク君に託してくれて、私のこと、守ろうとしてくれてありがとう」
景のお礼を素直に受け止めきれない爽馬は、切なそうに首を振って
けれどまっすぐに景を見つめ返す



