それから数時間が経ち、家に二十代半ばと思われる美しい女性が帰って来た
何度か見たことがあるその人は、伊吹家の娘だ
「ただいまー。あら、ハナちゃん帰ってたのね、昨日ぶりだね〜」
「ワンッ」
「お母さんのお友達に遊びに連れていってもらったんだって?よかったね、いっぱい遊んだかな?」
彼女は淡いピンク色の革の鞄をソファに置き、見上げる私に微笑んでからしゃがんで頭を撫でてくれた
「昨日の夜から今日の朝までは、私の弟の結斗が来てたのよ。新しい家族を見せたかったんだけど、丁度会えなかったねぇ」
その言葉に思わず反応ができず、ただ黙って彼女を見つめる
「んふ、またいつか会えるわね。お母さん見てくる」
そう言ってから立ち上がった彼女は、パタパタ母親の部屋へと駆けて行った
新しい家族だと言われた
複雑だなぁ.....
犬になってしまう人間の私を受け入れてくれる人はいないのに
最初から犬なら家族にだってなれるらしい
本当の私は、どこかへ消してしまった方がいいのだろうか
正真正銘の出来損ないだから
そんなことなど出来ないのに



