6月になり、そんな彼も所属する『狐学会』と称した妖術結社の派生組織が伊吹グループに侵入
伊吹グループ本社ビルからデータを盗んで逃走した
その日
飼い犬のハナとしてビル内の伊吹家にいた私は、騒然とする現場を目の当たりにした
「なんの情報が盗まれてるか確認しろ!」
「まずい、株価が下がってる.....」
「ダメだ警察は動かない!監視カメラの画像をホームページに貼れ!」
事の大きさに震えると同時
私を救ってくれた敬愛するあの方の思惑通りになっていく様を、ほくそ笑んで見ている自分がいる
「ワンッ.....」
そうだ.....
魔術系統の家系がボロボロに壊れていくのは何と良い気味だろう
私をいじめた
人を卑下することしか出来ない
腐ったプライドを持った
特別な存在達よ
自分の能力に奢り
成功を収めて来たものが崩れるのは
どんな気分か教えてくれ
そしてその翌日
誰もいないリビング
テーブル上のノートパソコンに目を止める
侵入事件があってから警戒されて家に持ち帰られたパソコンを
私はジッと見た
閉じたパソコンのサイドランプが緑に光っていたのだ
私は人間姿に戻り、そのノートパソコンをゆっくりと開く
「.....!!」
ログインされたままの画面
一瞬目を大きく見開いた私は、即座に小高幹部からの指令で首輪につけていたイチゴ型USBメモリを外してパソコンに接続
十数分かけて、とあるデータへのアクセスに成功した
自分でも思いの外上手くいってしまい驚いた
そして
大切な情報が入ったファイルを、イチゴ型USBにコピーしたのだ
「ごめんよ.....伊吹のおじさん。私はアナタになんの恨みもないのに.....これでお終いだよ.....」
放心状態で用済みとなったパソコンを見つめていると、時間の経過で画面が暗くなり自分が映って見える
.....醜いなぁ
そんな自分から視線をそらすよう、パタリとパソコンを閉じ、首輪にUSBメモリをつけてから再びハナ(犬)の姿へと戻った
そして、2度目の情報漏洩の機会を伺うとにしたのだ



