やっぱり私は彼の手駒として良いように使われるだけだったけれど


それに従うのも私なりの恩返しだった



犬としてどこかのビルに送り込まれ、長い間見知らぬ裕福な夫婦と一緒に暮らす



身体はボロボロになったけれど

それでも大丈夫


学校にいた頃に比べれば大丈夫



そんな私を心配するように、とある男の子が手を差し伸べてくれた


透き通った肌、氷みたいに艶々した瞳がまるで人形のような美少年


初めは彼が喋った瞬間、「この子生きてるんだ」なんて思ってしまった


どこか儚く寂しげな雰囲気をまとった、まさに一匹オオカミ



そんな彼に

「あなたが好きだ」

「一緒に妖術結社を出よう」


そう言われた時は、心臓が止まりそうだった


こんなに綺麗な男の子が私みたいな年上の女を、そうでなくても誰か人間を好きになるなんて


奇妙だった


彼はまるで何にも興味がないように思えたから

そんな彼がまして人を好きになる


私を好きだなんて本当だろうか?



嬉しさと戸惑いを半々に抱き

私は彼の思いを断った


けれど変わらず、彼は私に思いの丈をぶつけて来てくれたのだ


その純粋な恋慕の感情や言葉は彼の内から泡のように溢れ出し、その美しさが私を魅了する


恋愛対象にしてはいけない

そんな葛藤の中、まず先に弟のような愛情が芽生えた