それもそうと今までこの寮の大浴場は使われておらず、大浴場につながる扉も閉められていたのだ
「そうそう。個室バスルームを通り過ぎた奥の扉を開けると大浴場に繋がるの。でもこの寮も1年前に再び使うようになったばっかりだし、大浴場にまで掃除の手が届いてなくって汚いんだよねー」
「1年前までこの寮使われてなかったんや?」
「去年から男子寮Aの定員が溢れるようになって男子寮Bができたらしいんだよ」
結斗が肩をすくめて弥隼に教えると、彼は「へぇー」と頷く
そして会話を少し戻して
「汚いって.....それじゃあまだ使えないってことなんや?」
と首をかしげた
「うん.....。でも埃かぶってるだけで、綺麗にすればすっごい立派な浴場なんだよ。ってことで、今から掃除をします!」
異様に嬉しそうにそう宣言する景を、一年生も二年生もぽかんと見る
景はニッと笑うとキッチンの方へ消え、暫くすると上半身体操着、下半身青ジャージという姿で現れた
ジャージの裾は足首が見える程度にまくられており、洗剤を武器のように両手に持っている
「景さん」
「てことで私、今から大浴場掃除してくるからよろしく」
「えっ」
こんなにも嬉々として掃除しに行く人を見たことがないなどとみんなが考えてるうちに、景の姿は恐らく大浴場へと消えていた