「あっ、なになに君たちランデブー?」


そこに帰寮した市河がやってきて、2人は声のした方を向く


おっ.....日向!


今朝から男子寮Aのラジオ体操へ行くと元気よく出かけていた市河の帰寮に、景は距離感関係なしに大きく手を振った


「はははー、こんな近くにいるのにそんな大きく手を振らなくても見えるから」

「愛情こめた『おかえり』でーす」

「うんー、たーだいま」


市河はライの横まで来てしゃがむと、彼の肩を抱き「ヨッ」と胡散臭く手をあげる


「ラジオ体操楽しかったか?」

「ラジオ体操楽しいだろみんなでリズムにのって奇妙な動き揃える感じが堪らん楽しいだろ」

「そんなことよりここの雑草抜け」


景は2人のやりとりにクスクス笑うと、目の前にあるベゴニアの花弁をサラリと指の腹で撫でた


ザァァッと風で木の葉が揺れて掠れる音が心地いい


景は目を伏せて花壇に咲く花を、愛おしげに見わたした


「ライ、日向....今日はね、デザートにところてんを用意してるんだよ」


「.....ところてんか」


「ライ、去年食べたところてんの味、覚えてる?私は覚えてるよ。そして、もう一度食べたらどうしても、爽馬のことを思い出しそうで今まで避けててさ」


「ああ、もうあれから一年か。早いな」


「うん。あれから一年。爽馬、私たち___ 」


「まてまてまて爽馬死んだのか?なんだそのモノローグじみたセリフ?私たち何?私たち何だ!?」


まくし立てる市河の質問を聞いているのかいないのか、景はふふふと笑って息を吐き出す


「ん〜〜」

絞り出すような声とともに腕を組み大きく伸びをすると、しばらくして「はぁっ」と力を抜いた


「そうだね、よし。夏祭り行こうか」

「どこらへんがそうなんだ?」


景の言葉に、市河が土を弄ってた手を止め即座に聞き返す


「いつ?」

「ライはいつがいい?私は4日後くらいに行きたい気分かな」

「俺も4日後」

「奇遇、一緒だね。じゃあ4日後にしよう」

「了ー解」

「お前らなんで揃いも揃って4日後に祭り行きたい気分になるんだ?特定の祭りのこと言ってるだろ!?」


こんな時、市河に拒否権はない


その夜


男子寮Bの生徒たちはテーブルを囲みところてんを食べながら


調べたところ、どうやら4日後は市河神社という神社で祭りを開催することが分かったと(いう体で)はしゃいでいた