夜の九時を回り後夜祭もお開きになると、男子寮Bには全員が帰寮していた
そこで彼らは、結斗が月沼トレーディングからの牽制を受けたことを聞く
誰もはじめは苦い顔をしていたけれど、そこで折れないのが男子寮B_
いや、咲夜であった
「ちょっとみんな気ィ落としてないでさ!まぁ気持ちは分かるけど、鬱展開からのバッドエンドフラグ立ててないで次行こうぜ!」
「ああ。ところでお前後夜祭の間、校舎裏で九雷と二人で何してたんだ?」
咲夜の言葉が特に胸に響いた様子もなく、さらりと個人的なことを全員の前で暴露するライ
「おまーーー!!」
「あー風呂入ってコヨ」
至極どうでも良さそうにタオルセットを抱えた市河が目の前を通りすぎ、咲夜は彼の首根っこをむしり取る勢いで掴んだ
「待て、なぜ弁解を聞く気が起こらない!?」
「んー?もうこんな時間だし早く入らないと景が風呂掃除出来ないだろ。聞いてほしいなら風呂で待ってるから支度しな」
「お、おう。今着替えとってくる!」
ハッとしたように自室へ着替えをとりに行く咲夜を見ながら、結斗は「うん、まぁいいか」と首を傾げた
「え……いいんですか」
「いいんじゃない。てか俺らも風呂ー」
戸惑う千冬に、千加が適当に答える
確かに深く考えても仕方のないことだ
景は先ほどより幾分落ち着いた結斗をチラリと見て、気づかれないうちに視線を戻した
「風呂入り鯛」
「ばばんばばんばんばん」
「ばんばんばんばん」
「これは風呂で唱える魔法の呪文」
「ご唱和ください」
「「ばばんばばんばんばん」」
テーブルの上では千加が持ち帰ったたい焼きたちが、なにやら楽しそうに雑談している
それもまた、暗い雰囲気を吹き飛ばしてくれたかもしれない
そう思う景だった



