生徒だけど寮母やります!2


質問を質問で返されるとは思っていなかった


イェスかノーで答えたら、正解を教えてくれるのだろうか


鈴菜の頭には、景に告白したらしいライと結斗の顔が思い浮かぶ

「いや、わからへん」

視線を伏せて呟く自分に、隣に座る咲夜が笑ったのを感じた


「実際な、君らみんな景のことが好きやと思う。それはもちろん、景は君らのこと全力で守るし大好きやし。景からの愛を感じて、みんなも景を好きなんやろなって」


「うん」


「例えばな、布川君。君、何か好きなものある?」


咲夜は急に質問されて一瞬詰まるも、首を傾げてから素直に「ゲーム?」と答える


鈴菜は「へぇ」と意外そうな反応をしてから笑みを見せると

「じゃあ君たち男子寮Bの男子たちが、ゲームの中で5人パーティーを組むとしよう。そして君はバリバリ攻撃していくアタッカー」

と人差し指を立てた


「お、うん?爽馬も入ってんな」

嬉しそうに言う咲夜に、鈴菜は「おん」と誇らしげに頷く


そして話を続けた


「みんなで高難易度クエストをクリアした君たちパーティーが、1つのスペシャル回復ポーションと、4つのレア武器をドロップするとする」

「ほー?」

「さぁそれらを1人1つ分配するとなると、どれが欲しい?」


咲夜は考えるそぶりを見せてから、ウーンと唸る


小瓶に入った魅惑の液体か


それとも、光を反射させ白く輝く鋭利な剣か


「どっちも捨てがたい.....」

「はははん」


鈴菜はニヤッと笑うと、さらに話を続けた


「そこで君以外の1人が、スペシャル回復ポーションを欲しがる。なんたって1人しか貰えない超レアなHP全回復モノや。それを見たもう1人も、それなら俺もと手を挙げる」


「あ.....そうなってくると、回復ポーションが欲しくなるな」


「せやろ」


ここで咲夜は、なんとなく鈴菜の言いたいことが分かったような気がした


「じゃあ情報を増やそう。初めに回復ポーションを欲しがったのがタンク(盾戦士)やったら?。当然、敵の攻撃をモロ食らうタンクは回復系を欲しがるし、アタッカー(主力攻撃戦士)の君は攻撃力が上がるレア武器を貰った方が良い。
もしここでドロしたのがレア武器1の回復4なら喉から手が出るほど君はレア武器を欲しがったはずや。

なのにみんなが欲しがったからと言う理由で、君はそこまで必要でもないスペシャル回復ポーションが貴重に思えてしまって、自分のものにしたくなった。だって誰かの手に渡ったら、1つしかないそれは二度と手に入れられへんからな。悪いことやない、人間自然とそんな感情になんねん」


咲夜は顎に手を当てて想像する


「タンクは.....爽馬だな」


初めに回復ポーション取得に名乗りを上げたタンクが、自然と凛々しい顔つきの今はどこにいるのか分からない親友に重なり


思わず呟いた