ライ以外の男子寮B の3人も見守る中


はじめに口を開いたのは鈴菜だった


「.....ごめん.....本当にごめんなさい」


鈴菜は苦しそうな顔で、けれどライから視線を逸らさず謝る


ライはしばらく何も言わず彼女を見つめ返していただけだったが、やがて首を振ると


「謝るのはこっちだ。本当に悪かった」


謝罪の言葉を述べてから視線を伏せた


「え.....何で」

鈴菜は意をつかれたように掠れた声を出し反応する


「俺の父親が、九雷に頼んでたんだろ?俺が気付いたりしないようお前を口止めし、更には母親について嘘を吹き込んでおくように」


「.....うん.....でも.....」


鈴菜は首を振ると


「ウチは九雷の人間やからアノ人のこと全て知ってたのに、母親を知らずに生きてきた火野に何も教えず、火野のことずっと傷つけてきた父親の頼みを取ったんだ」

と、自分のした事を罪の様に言葉にした


景は鈴菜が自分のした事にどれだけ罪悪感を感じていたのかを知る


考えてみればずっとそうだった


彼女はライに嘘を吹き込んだあの日から、ライを避ける様になっていたではないか



___『あれから本当に、ライと鈴菜ちゃんは話さなくなっちゃったね』


___『せやなぁ〜』



入学直後の授業でライと鈴菜が一緒に校内を回った事で波屋有姫軍団に目をつけられてから、鈴菜はライに近付かなくなった


この時ライに母親に関する嘘を吹き込んでいたのだ


だから鈴菜はそれ以来罪悪感を感じ、ライに対して素直な心で接することが出来なくなったのだろう


そんなことを全然知らずに、傷つける様な事を言ってしまった



___『ねぇ、もう有姫ちゃんたちだって、鈴菜ちゃんがライと話しても嫌がらせなんてしないだろうし、そんなにライから離れることもないんじゃ?』