「はい.....どうしても小田さんにお会いしたく、お電話させていただきました。お越し頂きありがとうございました」


申し訳なさそうな景の言葉に、小田は「いいのよ、こちらこそありがとうね」と優しく返事する


皺の多い温かい手で手を握られ、景は花のような笑顔で頷いた


市河と咲夜も「ありがとうございます」と、はじめて小田の前で笑顔を見せる


ひとり高校生たちに囲まれて、状況を再認識した小田は笑顔を引っ込めると


「ところで、尋ねたいことって何かしら?」

と首を傾げた


彼らは目を見合わせて、咲夜が口を開く


小田は真剣に話を聞いてくれた


「実は俺たち、色々あってとある人を探しているんです。

その人はかつてこの学校の生徒で、今は多分40歳くらい?若い頃は頭が良く弁護士を目指していて、でも結局夢が変わって弁護士にはならなかったんですけど.....小田さんのことが大好きな生徒でした」


咲夜の話を聞いて小田は十分納得したように

「はいはい、誰かわかったわ」

と頷く


景たちは息を飲むと「本当ですか!?」と口々に尋ねた


「ええ、でもその人がどうしたの?」


次に小田の質問に答えたは市河だった


「無理だと思われるかもしれませんが、その人に弁護士として知恵を貸してもらいたいんです。弁護士を諦めて時間が経っているのはわかっています。でも、弁護士免許は更新しなくていいし、もしかしたら免許はまだあるんじゃないかって」