それから3ヶ月が経った
ということは、つまりハナが飼い犬として伊吹グループへ行ってから3ヶ月経ったということだ
聞く話によると、ハナが人間の姿で休息を取ることができるのは数週間に一度
月沼トレーディングの社長夫妻が、「犬たちと出かけるからハナちゃんも連れて行きましょう」と結斗の母を騙して伊吹家から連れ出す時だけ
しかしいつまでも嘘をつき続けるのは難しく、ハナの兄弟役として、やはり爽馬の父親や月沼夫妻は景を欲しがっているようだった
しかしここで彼らが景に近付かず手を出さなかったのは、爽馬との約束があったからだろう
したがって、そろそろ嘘にも限界が来ると予想した爽馬の父親は、とうとう作戦の実行を「狐」に命令した
狐とは
爽馬やアカギも含まれる『狐の密会』にて集められた若き妖狐たちだ
「いいかお前ら、伊吹グループの本社ビルのオフィスからパソコンデータを盗み出せ。どんな小さなデータでも構わない。と、いうよりも向こうのセキュリティが効いて大きなデータは盗めないだろう。
しかしそれでいい。今夜、すみやかに侵入し、すみやかにデータを盗んで、誰1人捕まらずに退散しろ!」
こうして爽馬の父親の命令により、爽馬たちは1回目の伊吹グループへの侵入及び窃盗を行った
侵入の際、ビルの違うフロアにある伊吹家にはボロボロの体のハナがいるのだと意識してしまう
そんな彼女を想像すると、バカバカしくてやるせなくて、爽馬は誰よりも早くデータファイルを盗んで退散した



