「あなたにとってメリットも何もない犯罪的作戦に参加する意味はなんですか」


身体をボロボロにしても

知らない家で犬を演じ続けても

犯罪に加担しても


それでもいいと思える意味は?


ハナは迷いなく答えた


「あなたのお父さんに救われたから、私は一生あの方について行くって決めたのよ」



この絶望感は、初めてではなかった


父親に心をぐちゃぐちゃに踏みにじられて

ハナにまでこんなことを言われて

何のために自分はここに来た?


ハナを、笠上美音を低脳親父から救うために


ここに来たんじゃなかったのか


‘‘お父さんに救われた’’ー?


爽馬が言葉を返す前に、ハナは理由を語り出した


「私は高校ではイジメられていて、自分のことが大嫌いで、家族にも誰にも言わず家出した、本当に最低な娘だったの。

行くあてもなく旅をして、お金が底を尽きた頃に妖術結社がある場所を知ってね。ダメ元で戸を開けて、助けを請うたのよ。もちろん魔術系統の人間だから白い目で見られたけれど、あなたのお父さんが私を受け入れてくれて、部屋を当てがってくれたの。

その時私、心から入れ替わって、この人のために何でもしようと思ったのよ。

例え、彼が私のことを何かに使えると思って受け入れてくれたのだとしても、それが本当にありがたかった。だから今回、断る選択肢なんて無かったわ」


爽馬は相変わらず表情を変えずに彼女の言葉を聞いて、ただただ父親を憎らしく感じた


何度、何度あの男に大切なところで邪魔をされてきたことか


また思い通りになるのか.....?


「爽馬くん?」

わずかの間目を閉じた爽馬を、ハナは不思議そうに見つめていた