「自分を愛されずに育った悲劇の主人公だとは思わないし、不倫して子供作って後悔の人生を送る低脳親父が憎いわけでも無い。

顔も名前も住所も知らねーその不倫相手の母親にも興味ない。まー、病気で寝たきりらしいけどな」



景ははじめてライの口からハッキリと出てきた『不倫』の言葉に、思わず反応してしまった


「ライの本当のお母さんは、もし今もお元気だったら、きっとライと一緒にいたかったんじゃないかな.....。だってお母さんだよ」


勝手なことを言ってしまったかもしれないと思ったが、ライは頷いてくれた



「あぁ.....どうだろうな。まぁ俺は、不倫するし、歩く低脳に恋するようなバカ女と一緒にいたいわけじゃないけどな」


「あは、酷い言い様だね」


ライは苦笑いとは言え、笑って肩の力が抜けた景を見ると


「でも、やっぱ親の愛とかは知らなかったし。景見てて、こーゆーのが普通の親がしてくれることなんだろーなと」

と言った


景は自分の寮母としての仕事に、ライがそう感じてくれていたんだと、素直に嬉しくなる


温かいご飯を出してくれること


汗に濡れた制服を洗ってくれること


真っ白いワイシャツに、アイロンをかけてくれるとこ


雑談したり口喧嘩しながら、髪を結ってあげること


おはようと、おやすみと

ただいまと、おかえりと


ライには多分、はじめてのことだったのだろう


「最初は生徒やって寮母やってこいつすげぇなって.....そんな気持ちだったかな。そんな寮母が、同い年で、なにも変わらないただの女子だって思い知らされるたびに、多分好きになってた」