言われたことは予想外だったものの
景はハッとしてライを見上げる
確かに私は今日1日、爽馬の事で頭が一杯だったのだ
ライだって同じ気持ちのはずなのに、自分を心配して言ってくれたのだと景はいたたまれない気持ちになる
「うん.....どうしても爽馬の事を考えちゃって。でも、ライも、男子寮Bのみんなも、元1組の人たちだってそうだよね.....」
と、景は無理やり笑った
しかしライは、何か言おうとしてから口を閉じて
「いや.....俺は、失望してる自分に失望した」
と視線を落とす
.....失望.....した..........
ライは景の横に腰掛けるとチラリと彼女を見てから口を開いた
「爽馬が出て行ったあの時、俺らは祝福するつもりでアイツを見送った。その祝福はそんな簡単にできたもんじゃなかっただろ。何度も考えてアイツのことを想って本心を殺して笑顔で見送ったのに、なんでアイツは今、犯罪紛いのことして、指名手配犯のごとく顔写真を出回らせてんだって怒りがこみ上げてきた」
景は痛いほどわかるその言葉に、ぎゅっと手を握り締める
そして掠れかけた声で
「ん.....」
と頷いた
「知ってる情報はあれだけだけど、そんな風に怒りを膨らませる自分に失望じゃん」
ライはまるで考えを放棄するかのように鼻で笑う
景はあのころの爽馬の冷たくて暖かい瞳を思い出しながら、目尻に涙を浮かべた
「私たちには分からないかもしれないけど、きっと爽馬の歩む未来は輝いてるってどこかで勝手に決めつけちゃって.....だから、こういう事してるって分かって、やっぱりショックで.....。今爽馬の周りには信用できる誰かがいて、温かいご飯があって、ぐっすり眠れる布団があるのかなって.....授業中もずっとそんな事考えてたよ」
景は溢れそうになった涙をぬぐうと
ふぅ、と短くため息を漏らす
誰よりも一番苦しいのは
多分爽馬だと思うのに
思いたいのに
この数ヶ月で爽馬が変わってしまったのかと思う自分がいた
あの頃の爽馬はそんな事をするような人じゃないから
そうとしか考えられないし
自我か何かを失って、別の誰かのようになったんだと思いたい自分もいる
否定的な考えばかりが浮かんで
よりによって結斗のお家の会社に侵入して.....
結斗をあんなにも傷つけた組織の一員だなんて
景はただただ足元を見つめた



