翼くんも戸惑う様子を見せず、いつも通り演技を続ける。


それを見ていたらなんだか、だんだん視界がうるんできた。



どうして、そんな平気な顔してるの?


どうしてみんな喜んでるの?


まるで二人を本当にみんなが祝福しているかのようで、悔しくて泣きたくなった。



今日で最後だと思って、必死で演技も頑張った。


なのに最後にしてこれ…。


神様はどこまで私に意地悪なんだろう。



いくら事故でも、演技の延長でも、

本当にキスしちゃうなんて…


そんなのあんまりだ。


どこまで私は傷ついたらいいの。


どうしてこんなもの、見せつけられなくちゃいけないの。



「…っ、」



思わずまだ幕も閉じていないのに、舞台袖から逃げ出した。