詩織の手を強引に引っ張ると、その場から逃げ出してしまった。



やだ…なんか……


なんなのこの気持ち。


胸の奥がジリジリして、痛い。



翼くんはいつもどおりなのに。


優しいのに。



他の誰かにまで優しくしてるのが、嫌。


それが白百合さんだから、もっと嫌。



そんなこと思っちゃう自分がまたすごく嫌だった。



なにこれ…ヤキモチみたいだ。


翼くんの事なんて別に好きじゃないのに…。


翼くんが他の子に興味を持ったら嫌だ。


私以外を好きになっちゃ嫌。


そんなの自分勝手すぎて呆れてくる。


おかしいわ…私、やっぱり。



自分の中に芽生えつつある気持ちに、気が付いてしまいそうで。


でも気がつくのが怖くて、必死でそれを見ないふりした。