偽悪役者

静音はとある線路脇にいた。


フェンスの向こうでいくらか電車が通り、背からは道を歩く人の声が聞こえる。



「莉央にぃ…深緒ねぇ…」



今でも鮮明に思い出せるあの時のこと。



「約束したのはこんなことじゃなかったよね?」



約束はきっと私だけの為だった。



「巻き込んだのは私なのに。」



笑顔で守ってくれた。



「会えなくてもどこかにいてるって思えたから我慢出来てたのに。」



今はどこにもいない。



「私、ヤクザなんて知らないよ?」



話してくれた中にもいなかったじゃない。



「犯人捕まえたい。罪償わせたいよ。」



私の大切な2人の命、奪ったんだから。



「全部言ったら怒る?」



誰にも秘密だって、3人だけの秘密だって。



「シノさんのあんな悲しい顔、初めて見たんだよね。要さんもきっと…」



怒鳴ってたけど、あれは怒りじゃない。



「シノさんと要さんならきっと分かってくれると思うんだ。2人が私のこと分かってくれたみたいに。」



私の親代わりだから。



「ねぇ、いいかな?」



その刹那、優しく背を押すように、風が一度だけ吹いた。