偽悪役者

一応後輩という立場上、篠宮に気を使って声をあげて大笑いするのを要は何とか堪えた。


しかし、話す声と体は震えていて、笑みを隠す為だろう、片手は口元を覆っている。



「わ、笑うな!というか、なんで俺だけなんだ!」



静音も同じ感じであった筈なのに、笑われた対象が自分だけだったのが、篠宮は気にくわない。



「静音は可愛いからいいんです!」


「それはどういう理屈だ…」



「え?私可愛いの?わーい、やったー!」



確かに可愛いが…と、21歳にもなって子供みたいに喜んでいる静音を見て篠宮も思う。


しかし、静音を可愛いと真顔で力説する要には、親バカを通り越してバカ親にならないかと心配になる。



「理屈なんてありませんよ。可愛い、それだけです。…でも、先輩、は…」


「あ~もういい!その話はもういい!」



また笑いそうになる要に、篠宮は強制的に話を終わらせようとする。



「静音から嬉しい報告もあったし、その気分のまま、食べるぞ!」



「そうですね。」


「食べよ、食べよ!」



少し冷めてしまった蛤のお吸い物を温め直して、家族3人、水入らずのひな祭りを始めるのだった。