偽悪役者

知識も経験もない。


そんな自分が突然、親代わりになんてなれるわけがない。



「…でも、研修あるんですよね?夜勤の時は施設に居れるわけですし、静音ちゃんは一人にはなりません。確かに僕は妻のことがありますから、僕の一存では出来ません。でも先輩なら、先輩だからこそ絣乂さんも提案してくださったんじゃないですか?」



静音に会っているのは要だけ。

事情は知っているが、静音の心理状態も考えて要の妻とは会ってはいない。



今のところ静音が信頼しているのは、篠宮と要、そして絣乂だけだからだ。



「大人だけであれこれ考えていても答えなんて出ませんよ。絣乂さんも言うのを待ってくれているんですよね?一度、静音ちゃんと直接話してみたらどうですか?当人がいないところでこれ以上悩むのは時間の無駄ですよ。」



「要……、そうだな。そうしてみる。俺より静音ちゃんの気持ちだよな。」


「はい。」



話したことと要から言われたことで、篠宮の顔は晴れやかだ。



「悪かったな、もう大丈夫だ。」


「いいえ。相談ぐらい、いつでも乗りますから。」



今度の非番にでも話してみようと、篠宮は絣乂に連絡を入れた。