偽悪役者

「座ってていいぞ。まあ、なんだ。おじさん、料理苦手…というかあまりしたことがなくてな。大体出来合いのもので済ませているから、期待しないでくれ。」



2LDKの部屋は、基本的に整理整頓されているものの服だけは散らかっている。


妻が亡くなってから、洗濯だけはしないと着る服が無くなるからしているが、その他は妻が亡くなる前のまま。



「この人、篠宮さんの奥さん?」


「ああ。」



和室の部屋の小さい仏壇に置かれた写真。

写っていた人物は、篠宮とは正反対に柔らかく微笑んでいる。



「優しそうな人だね。」


「そうだな…。優しかったな。」



優し過ぎて、文句の一つも言われないのをいいことに、仕事を優先してしまっていた。


それを篠宮は今になって後悔しているから、愛妻家の要には家族も大切にして欲しいと特に思う。



「ありがとな、手を合わせてくれて。あいつも喜んでる。」


「そうかな?それならいいな。」



絣乂の言った通り、静音はかなり礼儀正しい性格だ。



表情など年相応の部分もあるのだが、言葉遣いや振る舞いは落ち着いている。


靴の脱ぎ方や手を合わせる仕草がとても綺麗だ。