偽悪役者

「中学校も転校しなきゃいけなくなるが、大丈夫か?」


「学校………、学校はいい。篠宮さんは一緒じゃないの?」



聞いたところで大丈夫じゃないと答えられてもどうしようもなかったが、まさか自分のことを聞かれるとも篠宮は思わなかった。



「おじさんはお巡りさんだから、施設にはいけないな…。休みの日は会いに行くから、それじゃダメか?」



絞り出したのはなんとも自分らしくない答え。



妻がいる頃から子供は泣かれるから苦手だった。


組んだ相方に任せて、己は専ら事務処理か悪人側を担当していた。



「来てくれる?」


「ああ。約束だ。」



何が静音の心を開かせたか篠宮には分からなかったが、指切りをした静音が笑っていたから良しとした。



「絣乂と申します。」



午前9時を少し過ぎた頃、児童自立支援施設の児童指導員である絣乂(カスガイ)が署にやって来た。



にこやかに微笑みながら挨拶をする絣乂は、到底40歳には見えない若々しさを醸し出している。


見た目だけなら30代前半といってもいいぐらいだ。


そしてポロシャツに綿パンといった軽装で、一見すると児童指導員には全く見えない。