偽悪役者

母親の入院していた病院に電話して探し出してもらっている間に、篠宮は買ってきてもらったおにぎりを静音と食べる。



時刻は午前7時。


お腹が空いていたのだろう、お茶とは違いおにぎり2個を静音はペロリと平らげた。



「篠宮さん。」


「分かったか?」



病院に問い合わせていた事務員が篠宮を呼ぶ。



「母親の名前は柊船絵、あの子は静音、詠継祇ヶ丘中学校の1年生です。」



静音の母親は柊船絵(ヒイラギ フナエ)。


静音が小学2年の時に見付かった癌で入院中だったが、2週間ほど前に40歳の若さで亡くなった。



父親は柊任牡(ヒイラギ タカオ)、22年前の32歳時に車で自損事故を起こし即死だった。



「親戚もおらず、どうやって入院費を捻出していたのか病院側は不思議だったそうですが、不自然な点はなく特に追及しなかったようです。船絵も入院費に関しては貯金で賄われていると思っていたようで。」



「母親は知らなかったのか。まあ、自分の子供が、なんて考えもしないだろうしな。」



年端のいかない自分の子供が、脅され身体を使って入院費を稼いでいたなんて。


母親でなくとも思わないだろう。