「ほら、お茶を入れたから飲んでいいよ。」


「温まるぞ。」



署に連れてきたはいいものの、視線は下を向き口を真一文字、静音は一言も話さない。



「要、こんな時間だし、もう帰っていいぞ。」



時計を見れば、警らから帰ってもう既に1時間ほど経過している。


交代の警察官も来て、2人ともこの後は非番だ。



「何言ってんですか!この子を放って帰れませんよ。」



「お前、まだまだ新婚だろうが。せっかくの非番なんだから、家族サービスしとけ。俺は暇、だからな。」


「…………。分かりました。そうさせていただきます。」



暇―――――



そう。

篠宮には帰る家はあっても、要みたく迎えてくれる家族はもういない。


3ヶ月前、篠宮の妻は轢き逃げに遭い亡くなってしまったからだ。



後日犯人は逮捕されたが、篠宮の心に空いた穴は一向に塞がってはくれず、非番であっても職場に顔を出す日々が続いてる。



一方の要は1年前に結婚していて、仕事熱心だが愛妻家で、今も熱々の夫婦なのは仲間内では有名な話だ。


好意であり複雑でもある、そんな篠宮の心内を察して、要は先に上がることを決めた。