「あーもー、分かりました、分かりましたよ!行けばいいんですよね、行けば。」


「ほんと!」



仕方がない、という雰囲気で叫ぶ静音にも椎名はニコニコと嬉しそう。



続く誘い攻撃に静音が折れ、椎名の根気勝ちのようだ。



「投げやりだな。」


「楽しそうだからいいんじゃないか。」



来栖には全く理解出来ないのだが、都澄はそれが一番だとでも言いたそうだ。



人生経験の違いなのだろうか。



「さて、みんな楽しんでるところ悪いんだが、事件だ。」


「え。事件だったんですか。」



都澄は何事もないような様子に見えたのだが、どうやら事件らしく来栖はパソコンから顔をあげた。



「では係長、俺はこれで。資料ありがとうございました。」


「ああ。よろしく頼む。」



昨日解決した事件の裏取り資料を掲げ、受け取りに来た仁科は一課へと戻って行った。



「係長、それで事件の概要は?」


「この企業が恐喝を受けた。要、現場指揮を頼む。」


「分かりました。」



篠宮に聞かれ、都澄が見せた資料には大手企業の名前。


大きな事案になる前にと、みんな資料に目を通しながら気持ちを切り替える。