偽悪役者

「柊、話ってなにかな?」



静音は椎名を呼び出した。


柄にもなく緊張して。



「…………あの、すみませんでした。玲斗のことで怒鳴ってしまって………。」


「え、ああ………。いいよ、気にしてないよ。というか、僕も言い過ぎたからね。」



静音は玲斗を、椎名は静音を、お互いに心配し過ぎてしまったからに他ならない。


言いにくそうに何かと思ったらと、椎名は自分も悪かったから大丈夫だと優しく返す。



「いえ………。屋上で椎名さんが言ったこと、なんていうか、凄い心に刺さったというか…その通りだなって思って。自分を大切に出来てなかったのは、分かってましたから。」



自分の為と言いつつ、己の首を絞めてしまっていたのに、そこから逃げ出したのも自分からだった。



「あと、好きな人には生きていて欲しいっていうとこも。」


「あ、あれは……」



「私も、母にそう思ってましたし、シノさんや要さんにもそう思ってますから。」


「へ?ああ………」



そっちの意味ね。



好き、の意味が自分と違うんだけどな…。と椎名は複雑に思った。


一般的な好きとは、静音に対する椎名の感情のことなのだから。