偽悪役者

「岨聚…、雅、琅提、玲斗、鏡鵺。ごめん……色々と。」



静音は、5人の眼を真っ直ぐ見ながら言った。



「…何よそれ、自分だけが悪いみたいに。………私の方こそごめん。我が儘だってことは分かってたのに、引くに引けなくて、結局全部メチャクチャになって。静音、何も言わないから。エスカレートしてるのにも気付いてたのに、いつの間にかそれが当たり前になってたわ。」



お嬢様の立場に甘んじてやりたい放題してきた。


それでも周りに笑顔が溢れていたのは、岨聚が人を気遣えていたから。



だが、玲斗を純粋に想う気持ちが放棄させ、その結果がこれだ。



「あんなことしたって、思い通りにいくわけ無いわよね。」



チラリと玲斗を見る。



「許されないかもしれない。今更、虫の良い話かもしれない。でも、またあの頃の様になりたい。自分勝手なのは分かってるわ。けど、死にかけたんですもの。生まれ変わった気持ちでというのは、都合が良すぎるかしら。」



涙を浮かべながらも岨聚が強く口にしたのは、戻るという過去ではなく、なるという未来。



静音の言った色々にどれだけの意味が込められているか、痛い程よく分かったからだ。