偽悪役者

「これで穢らわしい貴女の心も洗い流されて、少しはマシになったんじゃない?」



ニヤリと笑うその表情は、さながら悪女だ。



「……お心遣いありがとうございます。皆様、お見苦しいところを大変失礼致しました。」



感情の籠っていない表情と台詞。


一礼して、静音は会場を出た。



「何よ、あの態度。」



「まあまあ、仕切り直そうぜ!」


「そ、そうね…。」



「ウェイターにシャンパンもらってくるよ。」



静音の言動が気に入らなかった岨聚は不満げだ。


しかし、これ以上場の雰囲気を損なう訳にはいかないと、鏡鵺は提案し、琅提はそれに同意し、雅は気をきかせる。



「っ、柊……!」



しかし耐えきれなくなったのか、玲斗は静音の出ていった方向へと駆け出した。



「ちょっと、玲斗!?」



「…ちっ。空気読めよ。」


「あの馬鹿……!」


「どど、どうしよう…」



玲斗の突然の行動に、岨聚は驚いて声をあげる。



取り繕うとしていた鏡鵺は悪態をつき、雅は頭をかかえ、琅提はオロオロするばかり。


声は小さいながらも、3人の態度には苛立ちと呆れがはっきりと出ていた。