時刻は、22時55分。


小学校の周りには、応援のパトカーやら救急車やらでごった返している。



「救急車なんて呼ばなくても、手当てぐらい自分で出来るんだけどな。」


「そりゃそうだけど、ナイフで切ったんだし。それに呼んじゃったんだから仕方がないじゃない。」



救急車の側で左腕に巻かれた包帯を見ながら、静音と玲斗は苦笑する。



椎名と橘がパニックになったまましてしまった報告がマズかったのだろう。


静音が怪我をしたと勘違いし、慌てた要が救急車を要請してしまったのだ。


ただ、自分で手当て出来るとはいえしてもらった方が良いに決まっているから、暗に不要とはいえない。



「鏡鵺、どうなるの?やっぱりこれのせいで罪重くなる?」



これ、とはもちろん左腕の包帯……ナイフで切りつけたことだ。



「刑を決めるのは私達じゃないけど多分ね。玲斗がいなかったら私を殺す気満々だったし。」



だけど、本当の気持ちを見れた気がすると静音は思う。


何故なら、到着した仁科に連れられパトカーへと乗り込んだ鏡鵺が、こっちを見て笑ったから。



地獄が始まる前の、ヤンチャで明るい悪ガキの顔を見れたから。