偽悪役者

「そこからはもう…、静音はいないも同然でした。岨聚の機嫌だけ伺って、静音との会話は必要最小限でした。」


「静音は何をされても何も言わなくて。静音が転校するまで私達は何も出来なかった。いいえ…、しなかったんです。岨聚が………岨聚が怖かったから。」



雅と琅提が涙ながらに語ったのは、単なる子供が言った、子供同士の、大人には他愛ないイザコザだ。


同級生達は、岨聚の言葉に対しとても素直に気持ちを表し行動しただけ。



悪気はない。


ただ、逃げただけ。



「…そう、でしたか……」



絞り出す様に言う要の手は、2人からは見えないが机の下で強く握り締められていた。



「氷室さんは織端さんが好きで、織端さんは柊さんが好きだった。では柊さんは?織端さんのことが好きだったのですか?」


「分かりません。友達としては仲良くしてましたけど…。静音は好きとか何も。玲斗も積極的でしたけど、告白してるところは見たことなかったです。」



仁科の問いに思い当たる節がないのだろう、雅は首を傾げる。


岨聚が嫌いと言ってそれまでの雰囲気とは一変したいじめられる現状を、静音は何の抵抗もせず黙って受け入れていた。