偽悪役者

「ん……ああ。来栖が噂を知っていてな。」


「僕達から言うことではないと思ったんだけど、誤解されたままは嫌だったからね。」



「あからさまに気を使われたんだけど。潜入捜査もする部署の捜査官としてどうかと思うよ、あの不自然さは。」



思い返しても、不自然過ぎて違和感しかない。



「そう言うな。仲間内と仕事とは違うと思うぞ。それより静音、氷室岨聚のことだが…」


「まさか私が突き落としたとでも思ってる?」



「そうじゃないよ。ただ、同窓会でのこと」


「あれは別に何でもないから。シノさんや要さんが気にすることじゃないよ。」



遮るように早口でそう言って、橘達に加わろうと静音は離れようとする。



「静音。」


「柊!」



引き止めようとする篠宮の声と、呼ぶ椎名の声が重なる。



「何ですか?」


「昨日の同窓会に使用したホテルの総支配人から外線だって。」


「係長や要さんじゃなくて、私ですか?」



「うん。柊に繋いでくれって。」



岨聚と揉めた騒ぎのことは説明済で、係長達を飛び越えて聞かれることなど無いはずなのに。


と、静音は不思議に思いながらも電話に出る。