偽悪役者

「氷室岨聚が意識不明の重体だ。」


「…………!!!」



都澄の言葉に、一瞬にして静音の顔色が変わる。



「意識不明って……何があったんですか?」


「階段から突き落とされたらしい。」



「突き落とされた?足を滑らした事故ではないんですか?」


「ああ。現場に争った形跡があった。」



上から順に、来栖、要、椎名、篠宮だ。



「何事も無く、家に帰ったんじゃなかったんですか?」


「家の中まで警護はしてないだろ。それに氷室岨聚が自らの意思で警備をすり抜け外出した可能性がある。彼女の携帯の履歴には公衆電話から着信があった。」



落胆する橘に、厄塒が見せたのは携帯会社から取り寄せた岨聚の電話履歴の一覧だ。



事件が起こったのは同窓会後、岨聚が家に帰り警備も一段落した21時前後。


岨聚が発見されたのは、家から程近い経営する銀行本店の外階段。


非常用の為、従業員も普段使うことのない階段で、ゲソ痕がはっきり採取出来た。



「鑑識からは、靴は量産品で特定は難しいが、大きさは27センチで種類は男性用。男の可能性が極めて高い。」



現場には、岨聚とこの靴の足跡しかなかった。