菜花はそれ以上何も言わなかった。



「こいつ以上に、俺の方がベタ惚れしてんだよ。だから文句がある奴は堂々と俺に言いに来い。影でコソコソ言うんじゃねー。以上!」



俺は戸惑う菜花の腕を引いて、その場から連れ出した。


周りの奴らはそんな俺らを静かに見守っている。



「やだ、なにあれ。超カッコ良いんだけどー!」



「矢沢君、あんな男らしいこともするんだね!ベタ惚れしてるとか……言われてみたーい!」



「ますます惚れちゃったかも」



そんな声の裏から、朔真やアオが大爆笑している声が聞こえた。


うぜー。


あいつら、マジでうぜー。


いちいち笑うなっつーの。



「る、琉衣」



「ん?」



「あ、ありがと」



そう言った菜花の口元が緩んだ。



「お、おう」



菜花が笑うと、俺も嬉しい。


だから、自然と笑顔になる。



そうやってさ、ずっと俺の隣で笑ってろよ。


菜花が笑ってることが、俺にとっての幸せだから。


他に……何もいらねーから。