「ああぁぁああぁっ」
ありったけの思いを吐き出すように叫ぶ。
パイプは思ったより重い。
それを思いっきり振り上げ男に落とす。
「なっ!?」
男を狙ったはずのパイプは謎の黒い生物によって幅かれた。例えればスライムのような体で、不規則な動きをしている。
それにより、樹乃の振り下ろしたパイプはその体に飲み込まれてゆく。
慌てて手を離し後退する。
成すすべなどないとでも言うのか。
「お前も加われば、より強い***様を……!」
男は、そう呟くと何処からか本を取り出し、樹乃たちの理解できる言語ではない何かを唱える。
「な、なに!?」
樹乃たちを取り巻く魔法陣が一斉に光り輝く。
囲っていた黒い生物は樹乃たちを逃さないようにするためか周りを一層高く囲う。
急にハッと目が覚めたかのように翼咲が立ち上がる。
「なに…これ…。私は、一体………」
「翼咲!?大丈夫なの!?」
「き、の…?
私…違うの…!樹乃を生贄になんか!そうじゃないの…!」
翼咲は正気に戻り、そして樹乃にしがみつき取り乱した。
それはいつものあたたかい翼咲だと、樹乃はすぐにわかった。
「わかってる。わかってるよ翼咲。
ボクは翼咲を信じてる。いつでも、いつまでも。」
樹乃は優しく翼咲を抱きしめた。
数秒そのままでいてからふたり同時に離れる。
樹乃は右手を翼咲を左手を差し出し強く握った。
何かを決心するようにーーー。
「「貴女だけは、絶対に守る。」」
