「な、なに…これ…?」
灯りのついた廃工場は、ただの廃工場ではなかった。樹乃のたっている場所を中心として禍々しく描かれている”魔法陣”
それをすこし遠巻きに囲う無数の黒い”何か”。
そして黒いマントで全身を覆うように隠している”人”。
その人間離れした光景に樹乃は立ち尽くすことしか出来なかった。
「樹乃ぉ……私の願い、解ってくれる……よね?」
翼咲は口の端を吊り上げ笑った。
そして手を横に大きく広げ天仰ぎ、狂ったように高笑いをした。
樹乃はへたっとその場に座り込む。
「………ワタシ は おカアサん と おとウサン ト………アハ…あはハハ
ははハッ」
「つば……さぁ……どうしちゃったの……ッ」
樹乃は堪えていた涙をこぼす。
マントの男は一歩前へ出て言った。
「では…その夢とやらを叶える為にと呼んだ親友を生贄に捧げ、私の夢を叶えよう……!!」
「生贄……?どういうこと?私は、ただお母さんとお父さッきゃあ!?」
言い終わる前に男は翼咲を樹乃の方へ突き飛ばした。
樹乃は慌てて翼咲を受け止める。
「お前は騙されたんだよ」
皮肉混じりのその言葉は樹乃を怒らせるには十分だった。
翼咲は放心状態で片言でお父さん、お母さんと繰り返すばかりだ。
「ボクの親友に……なにをしたッ!!!」
そう叫んでちょうど手元にあったパイプを掴み走り出した。
