Die or Live deadly

ーーーー樹乃はその光景にただ立ち尽くすことしか出来なかった。


午後10時45分、少し余裕を持って指定された廃工場に樹乃は来た。
廃工場とだけあって不穏な雰囲気だ。

「もう、いるのかな…?」

ただ、樹乃には関係の無いこと。
久々に翼咲に会えると思ったら、墓地でも肝試しでも行ける勢いだった。

「お、おじゃましまーす??」

入っていいのかわからず恐る恐る戸を開ける。
暗くて外の灯りが届くところまでしか中は見えない。
流石の樹乃も入るのを戸惑う。

「樹乃?」

暗闇の奥で聞きなれた大好きな翼咲の声が聞こえた。
樹乃は暗闇の恐怖心など忘れて中へ駆けていく。
すると小さな灯りを持った翼咲がゆっくりと樹乃の方へ歩いてきた。樹乃はやっと翼咲の姿を認識することが出来た。

「翼咲ぁ!!」
「樹乃………」

抱きつく樹乃を抱き返すわけでもなくただただうっすらと笑うばかりだった。

「こんなに痩せこけて…ちゃんと食べてた…?」
「えぇ。食べてたわよ」

食べていたという割には、以前の健康的な肉付きに比べて今は骨と皮しかないような酷い体だ。
樹乃はやっと翼咲から離れ、本題に入る。

「それで…願いを叶える為に私の力が必要ってどういうこと…?」
「…………こっちへきて」

くるりと樹乃に背を向け、翼咲はゆっくりと歩きだした。樹乃もそれに続く。

カツンカツンと二人の足音が工場内でこだまする。
翼咲は何も喋らない。
一体どこへ行くのだろうと思った矢先、翼咲は立ち止まった。

「そこで待っていて?」
「う、うん……」

最初の恐怖心が帰って来たような寒気だ。
翼咲は少し離れてから灯りを地面に置いた。
そして大きく息をすった。

「私の願いは……お父さんとお母さんとまた幸せに暮らすことッ!!!!!」

翼咲の言葉と共に工場の照明が一気にパッとついた。
樹乃一瞬その光に目を眩ませ、目を開けると…