二人の小林君


お店の前まで車できた顧問の先生に荷物を預けて、私とみゆきはファミレスへ。

お昼には少し早いからかお客さんは思ったよりも少ない。

笑顔の店員さんに案内されて窓際のテーブル席へ向かい合わせに座った。

「少し早いけどお昼にしよう」

「そうだね。みゆきは何食べる?」

私はテーブルに置いてあったメニューをみゆき側に向けてわたす。

メニューを開いたみゆきは和風スパゲティーを指さした。

きのこがいっぱいで美味しそう。

「香織は何にする?」

「うーん、どれにしよう。食べたいのがいっぱいで迷う……」

メニューに乗っているのはどれも美味しそうで目移りしてしまう。

少しの間悩んだけれど私もみゆきと同じ物に決めた。

「お待たせいたしました。ご注文はお決まりですか?」

テーブルにある呼び出しボタンを押すと笑顔の店員さんがすぐに来てくれて、決めていたパスタと飲み物を注文。

店員さんは笑顔を崩すことなく「お待ちくださいませ」と言い残してテーブルを離れていく。

「昨日のことだけど、ライブ会場にいた小林くんの様子が変わったって話してたよね?」

「うん……。スタッフさんの仕事をしてたんだけど急に別の人みたいになっちゃって……」

思い出すだけで悲しくなる。

誤解されたままは嫌だけど説明して信じてもらえるか分からないし、小林君のことが好きだって告白するのは怖い。

もしまた昨日みたいに冷たい感じでフられたら今度こそ泣いてしまいそうだ。

改めてライブ会場の外でのことを話すと、みゆきは「なるほどね」と何かに納得したような表情をする。