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三、四時間目の家庭科が終わって教室に戻るみんなから甘い匂いが漂う。

指定ジャージを着て授業を受けたから、五、六時間目の体育の時もきっと甘い匂いがすると思いながら、私もみんなと同じようにラッピングされた包みを持ってみゆきと一緒に廊下を歩いていた。

「誰にあげる?」

「私は隣のクラスの人かな」

「わたしは後輩のコにしよ」

「あたしは先輩」

誰にあげるか話している声を聞きながら私は一つ気になることがあって。

「私は小林君」

「あたしも」

「わたしもー」

自分があげようとしているからか小林君にあげると話している声が気になって。

半分まではいかなくてもそれに近いくらいの人が小林君にあげるんだって話している。

たくさんもらうなら私はわたさないほうがいいのかな。

作った物はみんな同じだし、そればかりもらっても飽きちゃうよね。

教室に近づくと技術の授業を受けていた男子がこっちに向かってくるように歩いてくる。

すると小林君にあげると話していた人達が廊下を走って行った。

「香織は行かないの?」

「わたすつもりだったけどみんながあげるなら同じ物だし。それにわたす勇気が──」

片手に持っている包みを見つめると、スルッと手の中から消えていく。

「えっ?」

顔を上げると私の包みをみゆきが笑顔で持っていた。

「しかたないなぁ。香織が行きにくいならわたしてきてあげる!」

「えぇっ!?」

「まかせて」と止める時間もなく、みゆきは野球部のマネージャー業で鍛えたのかあっという間に走って行く。