それから優斗君は小林君に好きな人がいると気づいて応援していたこと。
そして心配していてこのお店へ先に小林君を呼び出していたことを慌てた様子で話した。
「去年高校に入って間もなくつき合った子は俺と知り合うのが目的だったからね」
「余計なこと言うなよ」
目を細めて低い声を出す小林君に優斗君は笑みを深めて私をじっと見る。
「俺だって心配してたんだから。でも香織ちゃんなら大丈夫だね。清也のために俺に向かってあんな風に言えるくらいだし」
「すみませんでした……っ」
カッとなったからとはいえ、アイドルである優斗君にあんなことを言うなんて迷惑だったろうし恥ずかしい。
「俺こそ試すようなことしてごめんね?」
「いえ……っ」
「本当にそうですね。もし香織が小林くんと上手くいかなかったらうっかりネットにあなたのことを書き込んでいたかもしれません」
「それは止めてほしいかなぁ……」
きっぱり言うみゆきにあはは、と引きつった笑いをもらした優斗君はズボンのポケットからスマホを取り出すと「ヤバいっ」と急に慌てだした。
「もうこんな時間!? マネージャーと事務所から着信入ってた!」
ガタガタと椅子から立ち上がる。
「うわっ! マネージャードアのところにいるし」
優斗君の慌てように座ったままでお店のドアのところを見るとガラスごしに女性が険しい顔をしてこっちを見ていた。
あ……。小林君と一緒にいた人だ。
服装が違うから雰囲気は違うけどCDショップで見た人は優斗君のマネージャーさんだったんだ……。
「あの人は俺にバイトの誘いをよくしてくる一人なんだ」と教えてくれた小林君。
ホッとして体の力が抜けていると横にいたみゆきが「よかったね」と笑って言ってくれて。
私も「うん」と笑顔を返した。

