「それで話を戻すけど、清也に好きな子がいるみたいでさ。何か知ってない?」
「え……っ」
まさか小林君のそういう話をされるとは思ってなくて保健室で言われたことを思い出しちゃう……。
何て答えようかと考える私をチラリと横目で見るみゆき。
何か上手く言ってくれるのかな?
そう期待をこめて私は頷いた。
「それって香織のことですけど」
「えっ、みゆき!?」
予想をこえる返しに顔が熱くなる。
向かいに座る優斗君の顔が見れなくなってテーブルを見つめることにした。
「へぇー香織ちゃんだったんだ?」
「……っ」
今までとは違う低いトーンの声に肩がはねるように動く。
テーブルを映していた視界に腕が見えて、自分から顔をあげる前にあごに触られてクイッと上を向かされた。
腕をのばせるのは優斗君しかいない。
優斗君は目を細めるとフフッと小さく笑った。
「結構香織ちゃんのこと気に入ってるんだよね。どう? 俺とつき合ってみない?」
「な……っ!」
さっきまでとは違う冷たそうな笑顔に背筋がざわざわする。
「清也なんかよりアイドルしてる俺のほうがいい物件だと思うし」
「あいつ、つまんない男でしょ?」と馬鹿にしたように笑う優斗君に体が熱くなる。
「そんなことない!」そう大きな声を出して私はあごをつかまれていた手を引き剥がした。

