二人の小林君


「小林清也、知ってるよね? 前にライブ会場の外で君と話しているのを見かけたんだけど」

前に連れてこられた裏通りにあるお店に入るなり優斗君は小林君の名前を口にした。

まさか小林君のことを知ってるなんてと思ったけど、優斗君のライブ会場でアルバイトしていることを思い出してそれなら知っているかと納得。

みゆきも私から話を聞いていたからか特に何も言わない。

「知ってますけど小林君がどうかしたんですか?」

テーブル席に座って聞き返す私に優斗君は笑みを浮かべて「俺と清也が親戚だって言ったら信じる?」と爆弾を落としてきた。

「はあ!?」と驚くみゆきの声をすぐ横で聞きながら、私は小林君の笑顔と優斗君の笑顔が重なって見えたことにすとんと納得する。

「だから二人の笑顔が重なって見えたんだ……」

容姿も性格も違うと思う二人が何でだろうって思ってた。

他人同士でも似ることはあると思うけど、親戚って言われるほうが私には説得力があるような気がして。

「俺と清也が似てる?」

「はい。優しそうな笑顔が何だか似てるなって思っていました。優斗君とこうやって直接会って話す前のことですけど……」

「俺と清也がねぇ……。そんな風に言われたのは初めてだよ」

「何か照れるね」とふにゃりと笑う優斗君はテレビや雑誌で見るよりも優しそうに見えて。

つられるように私も笑ってしまう。