「どの人か分かればわたしがきいてあげ──」

「みゆき?」

おかしなところで言葉をきるみゆきに私はジュースから視線をあげる。

みゆきは横を向いて窓の外を見ているみたい。

誰か知り合いでもいたのかな?

そう思って私も窓の向こうに目をやると一人の人がこっちを見て立っている。

「え……?」

帽子をかぶって眼鏡をかけている男の人がこっちを見て手招きした。

最初は人違いをしているのかなって考えたけど、じっと見ていると相手が誰なのか分かって名前を言いそうになった。

何で優斗君がいるの!?

大勢じゃないけどファミレスにはお客さんがいるのに。

「ねえ、外の人小林優斗に似てない?」

「うそ! 本当にそっくり!」

私達の近くにいた女性のお客さん達が騒ぎ出してだんだんファミレスの中がざわついてくる。

「香織、外行くよ」

片手に財布、もう片手にバックを持って立ち上がったみゆきが早歩きでレジに向かう。

慌てて立ち上がってみゆきの後を追いかけた。


***


「ああ、やっと来てくれた」

私とみゆきがお金を払ってファミレスを出ても彼は同じ場所に立っていた。

変装しているんだろうけど気づく人は気づくっていうくらいの変装具合で、少なくともファンの人ならきっと分かると思う。

「なかなか来てくれないからどうしようかと思ったよ」

「何の用ですか? 今日は絡まれてるわけでもないのに……」

眉を寄せてムスッとしたような表情でみゆきは優斗君を見上げる。

優斗君はそんな視線を受けても気にしないで私の手をとった。

「今日はきちんと香織ちゃんに用があってね。この前行ったお店について来てもらえる?」

「えっ、でも……」

親しいわけじゃないのに私に用事って何だろう?

みゆきと顔を見合わせてもみゆきも分からないといった感じでどうしたらいいか迷う。

ためらう私にじれたのか優斗君はつかんでいた手を引っ張って歩き出す。

「無理やりでごめん。知り合いのことで相談があるんだ」

「え……?」

真剣そうな声に私とみゆきはお互いを見て首を傾けた。