「うーん、そう言われてもケーキをご馳走してもらったし、アイドルの人とこうやって話せただけでも貴重かなって」
私が思ったことをそのまま言葉にすると「欲がないんだね」と優斗君にクスクスとおかしそうに笑われた。
純粋に優斗君のファンだったらきっとお願いしたいこともあると思う。
だけど私が一番好きな男の子は同じクラスの小林君だから。
ビックリしてるし夢みたいだし、優しい笑顔は小林君と似てるけど。
「──ああ、もう行かないと。残念だけど君達とはそろそろお別れだ」
スマホを手に持った優斗君が画面を見て、眉を下げて申し訳なさそうにちょっと笑う。
お菓子を断られた時に見た小林君の顔がふと浮かんで──だけどその表情は重ならない。
慣れた様子で店員さんに話しかけてお金を払う優斗君を見ながら、やっぱり二人は違うんだなって改めて思った。