みゆきと二人一緒に連れられた場所は裏通りにある小さな一軒のお店。
カランカランと扉を開けると鳴り響くベルの音が涼しげで、中はいくつかのテーブル席があるけれどお客さんは誰もいないみたい。
「ここは穴場でよく来るんだ」
一つのテーブルにつくと彼はメニューを開いて並んで座る私達にわたしてきた。
「二人にケーキをご馳走するよ」
***
「ところで、あなたは小林優斗さんで間違いないんですよね?」
ケーキをご馳走になった後、みゆきが確かめるように向かいに座る男の人に聞くと彼は「今さらだね」と笑った。
「分かってて着いてきたんじゃないの?」
「はあ!? そっちが勝手に香織の手を引っ張ってきたんでしょ!?」
イライラした様子のみゆきに「ああ、そうだったね」と笑顔を崩さない優斗君。
何だかライブで見る優斗君とは違う人に見えてやっぱり仕事とプライベートは違うのかなぁと思う。
「マスコミ関係なら安心してよ。俺は恋人ができたら宣言するって公表してあるし、君達二人といるから説明はどうとでもなるから」
「そうですか」
「ちょっと香織っ、巻き込まれたのは香織なんだから文句の一つもないの?」