だから、咄嗟に誤魔化そうと口が動いてた。
「…けど、俺にとっては大事な家族だ
神楽を悪く言うなよ!
あいつは両親に捨てられてもいないし、可哀想でもない!!
そんなくだらない噂信じるお前らの方が可哀想だっつーの!!!!」
神楽の本当の家族なんて俺は知らない。
何が普通で、何が異常かなんて俺にはわからなかったんだ。
本当の親がいない神楽が異常?
なら、親が居て、育児放棄された俺は普通なのか?
そう考えたらそれ以上何も言えなくて、俺は逃げるように教室を出た。
それからそのクラスメイトと話さなくなったのは、俺が避けたからなんだ。
今度は何を言われるかなんてわからない。
いつか、俺のことについてまで口を挟まれるんじゃないかって。
ただ怖くて、俺はそいつから逃げた。
そして俺は、人を疑い、怯え、ずっと偽りの言葉を貫いて人と接した。
そんなことを続け、俺が中1になった時。
唐突に、そんな日常に嫌気がさした。
俺を散々いじめてきた奴らも、表面上いい顔をする親にも。
偽り続ける自分自身にも。
それを考え出したら止まらなかった。



